国際理解から試みた総合学習 

(1)ねらい

  中学生になると,多くの生徒,世界の出来事に少なからず関心を持ってくる。また,身近なところでも,隣の生徒が海外生活経験者であったりすることもある。

 そんなことからも,自分と違った生活に関心を持ち,違った文化,国家を知ろうとする。また,一度は海外の国々で生活してみたいと思う気持ちの生じてくる。

  この興味・関心を学習の起点にし,生徒をよい以上高めていけるように,視野を広げ,考えを深め,実践行動できる生徒へと変容させるようにしていく必要がある。

この課題に「国際理解」はうってつけである。

 「新指導要領」にあるように,

 1 豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。

 2 自ら学び,自ら考える力を育成すること。

 をふまえ,

  国際理解の目的及び学習内容としては,

 「地球上のどんなところで,どんな人々に接することになっても,日本人としてお互いの人権を尊重し,共生していける資質の人間を育成する」ためにいろいろなことが考えられるが, 主なものとして「平和」「環境」「共生」「他言語コミニュケーション」といった方面からの 教育が考えられる。

 この方面からの学習としては,

 「平和」では,対立と融和,戦争と紛争,国際機関(組織),文化圏の歴史,国家

 「環境」では,エネルギー・資源,開発・環境破壊(汚染),環境保全・環境改善,

 「共生」では,人権,福祉,文化享受,相互依存,民主主義,他言語

 「他言語コミニュケーション」では,言語コミニュケーション,非言語コミニュケーション,情報処理がある。

 この学習のキーワードとしては,

 「平和」では,文化理解,価値観,人種,相互関係

 「環境」では,文化理解,価値観,地球的視野,経済,開発

 「共生」では,文化理解,物流,自己確立,社会性,ボランティア,国際交流,差別・偏見

 「他言語コミニュケーション」では,異文化理解,自己確立,社会性,文化間交流

 を,ふまえながら展開していく必要がある。

 

(2)予想される題材

 

  ・地域や身近な事柄や心情面に関わる課題

  ・他者理解の課題

  ・生徒の視野を広げようとする課題

  ・生徒の国際性,国際感覚,資質の向上を意識した課題

  ・国際協調・交流を意識した課題

  ・自己表現力向上を意識した課題

  ・帰国生徒,外国人生徒との関係を意識した課題

  ・衣服の文化からの課題(自然環境からの学習アプローチ 人間の知恵,工夫,努力,)

  ・食事の文化からの課題(自然環境からの学習アプローチ 人間の知恵,工夫,努力,)

  ・住居の文化からの課題(自然環境からの学習アプローチ 人間の知恵,工夫,努力,)

  ・自然環境(気候,気象等の風水害)からの課題

  ・移動手段(人々の交流,物品の往来)からの課題

  ・観光訪問における施設等への考察に伴う課題

  ・一時滞在における生活必要品・施設等への考察調査への課題

  ・長期滞在を考えた生活必要品・施設等への考察調査への課題

  ・実生活での共生のための課題

 

  などの課題設定が考えられる。

 

(3)指導計画

 

生徒の自発的学習力を中心に押し進めていくが,教師サイドとしては,

 1,生徒の興味・関心をとらえる目と方法の把握。

 2,生徒の社会と実際社会を結びつかせる視点の獲得

 3,生徒の追求活動を見定める視点の獲得

 4,生徒のパフォーマンスを解釈する解釈方法の獲得

 5,場合によっては撤退しなければならない時期の見定めと方法

 6,学習内容の継続性の維持

   などを,総合学習を押し進める上で教師は自己自身に獲得していかなければならない資

  質の一つである。

  指導計画作成の上で,教師サイドとして,時間的に押し迫ったような窮屈な計画は立て

  ず,余裕のある計画を立てる必要がある。

 

ここでは,広義の国際理解ではなく,狭義の国際理解を中心に実践的に試みた。

 例1,第一段階(中学1年生対象)(70〜100)

   全体学習のためのオリエンテーリングのため各パートに分かれての実時間(ー10)

異文化は,味から

  (自然環境の身体への影響を考え,各地方で味付けに独自の方法が生み出された。人は自

   分の口に合わないと「まずい」といい,ほとんど二度と口にしなくなる。しかし,二度

   三度と口にすることによりなじんでくるものもある。世界は広く,いろいろな味付けが

   ある。これを自分の口で味わってこそコミニュケーションも生まれる。)

 オリエンテーション  10

   ↓   ■全体でのオリエンテーション

   ↓ グループ分け(課題から興味関心のある者でグループ化)

    ・図書室,図書館の利用(書籍の配置、書籍の見方等) 2

   ↓ ・新聞の見方      1

   ↓ ・官公庁への問い合わせについて      2

   ↓ ・インターネット検索について      2

    ・関係ビデオ鑑賞      2

   ↓ ・記録の仕方      1

   

 実体験活動  3〜5

   ↓ ■導入時は,教師が火付け役になり,問題提起する。

   ↓ ■身近な食べ物に違いはあるのか

   ↓  身近なスナック菓子は,同じ製品で味に違いがあるのか?

   ↓ ■漬け物等,見た目が変わらないものの味見等

  味違いの書物調査・インターネット調査  10〜15

   ↓ ■書物の検索方法,及びパソコン操作方法の学習

   ↓ ■生まれ故郷と違う場所で生活する人々は,どのように故郷の味を食べ

   ↓  ているのか?

   ↓ ■食材料調査

 近隣人からの聞き取り調査  10〜15

   ↓ ■地域が違えば料理法(味付け)も違うのか(地域選択から考える)

   ↓ ■諸外国料理店への訪問等

   ↓ ■諸外国ではどうか(居住者がいれば)

 食品会社聞き取り調査  (夏休みを利用する)

   ↓ ■同じ日本でも,発売地域により味付けには工夫をしているのか

    食品会社,ファミリーレストラン等への聞き取り調査

   ↓ ■食品会社の嗜好調査内容についても聞き取りする。

   

 食品会社からのとりまとめ  9〜12

   ↓ ■レポート作成の後,発表会により,全員の認識度を統一

   ↓

 日常性の食べ物の違い調査  20

   ↓ ■近隣人からの聞き取りを料理別にまとめる。(再聞き取りも実施)

   ↓ ■インターネット等でも調査

    ■学校関係者等の出身地別の料理講習会開催

 諸外国での味付け調査  6〜14

   ↓ ■世界的規模での営業をしている会社の製品に的を絞る。

   ↓ 飲料水など手短に入手できる製品を調査

   ↓ ■世界的規模で普及している「唐辛子」「じゃがいも」「まめ」の調理法

   ↓ JICA関係者からの料理講習会実施等

  食べ物の考察・話し合い  6〜9

   ↓ ■聞き取り調査,文献調査,インターネット調査からの結果をもとに考

   ↓    えをまとめ話し合う。

  まとめ・発表  6〜10

      ■自分たちの調査した結果からの考えを,他人に全力を尽くし理解して

      もらえるような発表をする。

     ■図面,表,写真,ビデオ等の映像関係を駆使する発表。

 ・留意点

  1,児童生徒(学習者)が負の知識(マイナスイメージ)を持たない配慮が必要。

   *例えば,その地域を学習させるために,その地域で使用されている物(衣服・食品・生活物資等)を,単品で持ち出し,直

   接ふれさせたり,体験・経験させるようなこと。具体的なこととして,南方(熱帯)地方で使用されている香辛料などを味

   見させたりすることほど愚かなことはない。(日本でも,香辛料だけを口にしてはいないのに)実際に使用されている場面

   での体験・経験は貴重な経験であり,その場でのフォローアップ(肉付け)も必要である。

 2,最初の段階で,書物や,インターネットでの検索方法について,的確な操作方法をマ

   スターさせて行う。

 3,インターネット検索の場合,信用度の高いHPの見方の理解させる必要がある。

 4,学習内容や,学習のキーワードについて,的確なアドバイスが出来るよう,指導者側

   は,資質を高める必要がある。(自分で対処できない場合は,対処できる人の配置をする。)

 

 5,食品製造会社は,全国規模で営業を展開している会社に当たる。また,世界的規模で

   営業展開している会社にもアタック出来たら実行させる。

 例2 第二段階(中学2年生対象)(70〜105)

 ◎快適な生活をするために

  ・ ここ20年の間に,多くの海外で生活をしてきた生徒が帰国してきた。このような生

   徒に接しているうちに,自分もいつかは,海外(国内他都市)で生活してみたいと考えて

   いる生徒もいる。この生徒に対して,生活するために必要なことは何なのか,考えさせ,

   自分で必要なものを調べる。(インターネットや海外生活解説書,大使館・領事館,各

   県案内所等への問い合わせ,該当地域生活者からのヒアリング)

 オリエンテーション  6〜10

  ↓ ■国内外の他都市に生活している家庭の様子をビデオ鑑賞

  ↓ ■国内外で生活する家庭の様子(書籍から見る)

  ↓ ■今住んでいる都市への満足度,不足度(何が足りないか)を考える。

  ↓ ・図書室,図書館の利用(書籍の配置、書籍の見方等) 2

  ↓ ・新聞の見方      1

  ↓ ・官公庁への問い合わせについて     2

  ↓ ・インターネット検索について      2

  ↓ ・関係ビデオ鑑賞      2

  ↓ ・記録の仕方      1

  ↓

 場所探し 10〜17

  ↓ ■自分で知りたい都市,行ってみたい都市を選び出す。

  ↓ (国内外を問わず)

  ↓ ■どんな興味関心を持っているのか自分で確かめる。

   ■同じ興味関心で他都市も調べてみる。

  ↓ ■多方面から比較調査してみる。

 都市選定  14〜23

   ■自分の望んでいる生活を考える。

  ↓ ■もっとも興味関心を持ち,自分自らが生活してみたい都市の選択

  ↓ (国内外を問わず)

  ↓ ■諸都市の案内所等から資料を取り寄せ調査等

 日常生活の分析  (夏休み期間に自宅で自己観察)

  ↓ ■自分の日常生活の中で,必要不可欠なものは何か,自己分析する。

  ↓ (朝からの一日の行動を)

  ↓ ■自分たちにとっての娯楽施設などの役割など,じっくり分析する。

  ↓ ■毎日の行動を記録し,自分の行動パターンを考えてみる。

 選定都市の調査  16〜22

  ↓ ■日常生活に必要事項の調査

  ↓ ■生活必需品の購入の是非は(購入できないものの対処法)

   ■今,自分が使用している品物で使用できないものの調査および対処。

  ↓  (当該地域居住経験者からのヒアリング)

  ↓

 他都市での生活  16〜23

  ↓ ■自分の生活スタイルを考える。

  ↓ ■居住経験者等からのヒアリング(生徒を含め)

  ↓ ■他都市生活経験者は,体験を参考に資料提供。

  ↓ (JICAの青年海外協力隊員OB保護者の講話も含める)

  ↓

 まとめ・発表  8〜10

   ■自分の他都市での生活ぶりを「論文」にまとめ,発表し相互批評

   ■図面,表,写真,ビデオ等の映像関係を駆使する発表。

・留意点

 1,生徒は興味関心のみで都市を選択し出すが,導入としては,興味関心を優先させてよい。

 2,生徒自身が自ら生活の場として選択したときと,「憧れ」等の旅行気分で選択していく

   ときとの視点の違いを自覚させ,日常生活から足元を見つめ直させる。

 3,日常生活ということで通学する学校選択等には,インターネットの利用(メールのやりと

   りでの情報収集)もさせる。

 4,日常生活を自己分析することにより,社会行事・自然・学校・公設施設・家族・友人等がどう

   機能しているかの考える。

 

例3 第三段階(中学3年生対象)(70〜130)

 ◎快適な生活を求めた能動的な生き方は

  ・ 自分にとってバリケードのない日本の生活では考えられない,諸外国での様子を知り,

   自分達が諸外国で快適な生活するためには,社会環境など整えなければ生活しずらい,

   そのような環境を,現地の人々に快適な環境にするためには,日本人としてどう貢献す

   ることができるか,考え,調べ,実践行動する。(インターネットやNGO関係機関,JICAマス

    コミ関係,ユネスコ,ボランティア団体)

 オリエンテーション  5〜10

  ↓ ■全体でのオリエンテーション

  ↓ ・図書室,図書館の利用(書籍の配置、書籍の見方等) 2

  ↓ ・新聞,機関誌,会報,研究紀要,学会誌等の見方 1

  ↓ ・官公庁,NGOの調査,問い合わせについて     2

  ↓ ・インターネット検索について     2

  ↓ ・関係団体,機関のビデオ視聴     2

  ↓ ・記録の仕方     1

  

 異文化を知ろう  8〜16

  ↓ ■日本のおける生活を見る

  ↓  地震・自然災害での様子をみる

  ↓ ■先進諸国の生活ぶりを見る

  ↓ ■経済的窮乏国の子どもの生活ぶりを知る,

 身近な活動  8〜16

  ↓ ■地震・自然災害の救援活動について知る。

  ↓ ■日常的に実施している募金活動のお金の流れを知る。

  ↓ ■マスメディアからの情報収集

 活動者からの聞き取り  8〜16

  ↓ NGO団体からの聞き取り

  ↓ UNICEF等の国際機関からの聞き取り

  ↓ ■文献からの読み取り

      活動団体の個別聞き取り  (夏休みに実施)

  ↓ ■活動の起点

  ↓ ■主な活動内容

  ↓ ■活動者のやりがい

  ↓ ■体験学習の実施

 主なNGOのまとめ・発表  10〜20

  ↓ ■各NGOの活動者との懇談会で,活動者の心情を推し量る。

  ↓ ■各NGOの活動をまとめ発表し,全員の認識の統一をはかる。

  ↓ ■ボランティア(自己完結行動)を学ぶ。

 諸外国の識字率・就学率調査  8〜14

  ↓  ■文献調査・インターネット調査

  ↓ ■自分の立場と比較し,自学自習を知る。

 諸外国の窮乏タイプ調査  8〜16

  ↓ ■諸外国で,子どもがおかれている状態を把握。

  ↓ UNICEFの講演聞き取り

 自分たちでできる活動の見極め  10〜12

  ↓ ■パートに分かれ,国別,地域別にまとめる。

  ↓ Gごとに発表後,活動できることについて話し合い。

 活動  5〜10

    ■活動開始(広報,啓蒙,賛同者集め,カンパ等)

 ・留意点

  1,自分から情報を収集する姿勢を育て上げる。

  2,自分が,その場で生活をしようとしたら,どんな環境を整えていくことが良いか考え

    られるようにする。開発途上国に対しての見下げた見方を排除する。

  3,地域でボランティア活動に励んでいる方々にも講師として活躍してもらう。

  4,実践活動に貢献できるように持っていく。

(4)予想される問題点

   とかく社会科との関連を強く感じている生徒も多く出てくる。他教科との関連を考えた

  り,総合的に考えたりする事が出来にくい生徒もでてくる。そのため,国際理解などとの

  名称を使うことなく,自分が快適に生活するためには,自分の地域や,移り住んだところ

  で,どのような環境を構築していくことがよいのか考えられるようにしたい。

 

 

 実際指導して 

 インターネットのみでの指導には,いろいろなことが考えられる。メリットも,デメリットも,両方をよく理解し,対処法を考えていかなければならない。

 あくまでも,国際化教育を見据えた上で,児童・生徒が,将来,社会にでてからの「生きる力」を養えるための方向性をしっかりとふまえ,教師だけの見方ではなく,いろいろな分野の一流人の考えも,取り入れていく必要を感じた。

資料

Yahoo! JAPAN

http://www.yahoo.co.jp/

大手インターネット検索会社のHP

goo

http://www.goo.ne.jp/

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Infoseek Japan

http://japan.infoseek.com/

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検索省

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首相官邸

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日本書籍出版

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食品

http://shop.nessinfoods.co.jp/

地域別味調べに参考になるHP

製菓

http://www.meiji.co.jp/

地域別味調べに参考になるHP

製菓

http://www.calbee.co.jp/

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コンビニ

http://www.sej.co.jp/

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コンビニ

http://www.lawson.co.jp/

地域別味調べに参考になるHP

NGO情報センター

http://www.ngo.or.jp/

NGOの情報管理HP

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・日本列島大地図館 小学館刊   ・世界全地図  講談社刊   ・International GEO Magazine 同朋社出版

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