会報創刊に当たって

　　　　　文部省・学術国際局長　篠　澤　公　平

　このたび，全国海外子女教育研究協議会において，会報を創刊されるに当たり，一言お祝いの言葉を申し述べます。

　現在，海外に在留する日本人子弟は，約二万一千人にのばり，これらの子弟に，日本国民にふさわしい教育の機会を確保することが重要な課題となっております。この趣旨から，文部省では，海外子女教育，帰国子女教育に関する各種施策を実施していますが，特に本年度は，当会の強力な御支援もあり，在外教育施設派遣教員の確保，処遇の安定（出張に統一）のための制度を整備することができました。

　今後の課題のひとつに，国際性豊かな人材の育成という点を考慮しつつ，海外での教育にふさわしい教育の内容・方法を開発研究することがあります。

　また，日本人学校等に国内の小中学校の先生を派遣している目的は，直接的には勿論，国内と同水準の教育を受ける機会を提供することにあり

ますが，視点を変えて，先生方に着目した場合，教育困難の地において広い視野を身につけ，国際感覚を養うことにより，国醇理解教育の担い手として国内の教育現場で御活擢頂くという趣旨もあるわけです。

　この研究協議会は，海外の日本人学校等でかつて教鞭をとられた先生方を中心に，その肯重な経験をもとにして，日本人学校等における教育課程や教育環境の問題，海外経験を生かす教育の在り方，帰国子女教育の問題等全般にわたる研究，協議を目的とする団体と聞いており，上記の趣旨から文部省としても，その活動に大いに期待しております。

　今回の会報の発刊は，全国でそれぞれ御活躍なさっている会員相互の交流にとどまらず，この会の研究・実践活動の一層の発展という意味において大変意義深いものがあると感じております。

　海外子女教育研究協議会の今後の御発展をお祈りして，お祝いの言葉といたします。