外国人教師の効用は

茗渓学園中学高校長   岡 本   稔

13号巻頭言(1982年11月20日発行)

 近年,ブリティシュカウンセルや英国教育振興会等の力入れで,外国人教師の雇用が増えています。ここ茨城でも県教委指導課に一人,本学園外の私立二校に各一人の先生がおられます。

 今年,県教委は英語教育に本鹿を入れると一名増員しましたが,一私立校では大学受験に影響なしと言うことで,英語科教師の反対があったけれど,外国人教師の採用を中止したと聞いています.

 問題にされか外国人教師の効用について,いろいろ意見があると思いますが,茗渓学薗では次のように考えて三年前よりイギリス・アメリカ・カナダから計三名の先生方に来ていただきました。

 効用の第一は容貌魁偉に慣れることにあります。日本人は長い間,単一言語・単一人種の社会で生活して来ました。外国人と接しても後退りしない,何かお手伝いできる生徒をつくりたいと考えました。

 第二は英語教育での効用です。日本人教師では教えられない生きた英語が習得できることは周知のことですので省略いたします。茗渓学園では生徒に次代の国際人として世界に日本を理解させる力を必要としています。

 第三は異文化を理解すること,外国人の考え方・行動の仕方を知ることがあります。これには大変興味深い経験がありました。学寮生活をしている高三の生徒達が強力なパチンコで遊んでいたところイギリス人の先生は厳しい態度で生徒に臨まれました。私遠日本人教師ならば「なんだ子供染みた遊びをして」と叱るところですが,先生はパチンコは外へ向けて発射するもの被害は必ず他人に及ぶと言うのです。それは当然な話ですが激し方が違うのです。学寮生徒の世話をされている先生は生徒達の不断の学寮生活の甘さ・悪さを指摘され,それから一週間毎日十粁のマラソン・筋肉トレーニング・六月のプールでの水泳をともにされました。

 またアメリカ人の先生は,厳冬テニスコートでラケットを振るクラブ活動を見てクレージィと肩をすくめておられましたが,着任二年目にはご自分も生徒と一緒にプレイされています。

当初,予期せぬ効用を第四に挙げます。茗渓学園には現在二百七十名はどの帰国子女がおります。このなかの現地校経過者が,学園での生活や日本での文化差について不安・不満を感じ,外国人の先生方に訴えに行きます。

先生方も日本での生活が浅いだけに生徒達と真剣に話しあわれます。そして私に,日本人教師に疑問を投げかけ,話しあいの結論の確認を求めます。想像が当っていた時には大きな合点のポーズを納得のいかぬ時には再三再四説明を求めてきます。

 これは学寮の現地校経過者にとっては誠に幸いです。帰国子女には多かれ少なかれ「私達の考えはわかって争り見ない」と言う態度があります。うっ積したものが同じ文化の中で生活された外国人の先生の前に吐き出され,共通の問題として話しあわれることは,生徒が問題を前向きに解決しようとする取組みになるからです。

 学寮では最近「英語で話そう」の会が週一回持たれています。外国人の先生方が主催されており,帰国子女を中心に英語・外国に興味を持った生徒が三,四十名集まります。これは前文のことがきっかけで,積極的な展開となったもので,先生と生徒・生徒同士の国際理解に役立つものと信じます。

 効用を考えて外国人の先生方を迎えるには,受入れの体制づくりと先生その人の問題があります。茗渓学薗では招く条件として,日本文化を理解し学園の教育方針に協力する姿勢を持たれることを要求しています。同時通訳が見られる職員会・二泊三日の教職員研修会を日本人教師とともにし,生徒のクラブ活動から生活指導まで仕事になっております。

 学園では外国人の先生方の研修を行っています。教科主任のフォロー,私も国立博物館・都立美術館を案内しますし,生徒の研修旅行(日本文化を探るのテーマで金沢・福井・京都でグループワークをします)や筑波周辺の野外活動には事前調査の段階から参加し,日本文化と日本の学校教育,とくに本学園の取組みを理解していただいてます。

 先生を探すのは大変です。交流機関がありお世話いただいても英語の授業で精一杯だそうです。外国人の先生方同士が交歓すると,相手は本学薗での勤務ぶりにびっくりされると同時に一寸羨やまれると報告されます。茗渓学薗には,過去留学したり海外で教育の仕事をした先生方が二割おります.留学先の後半が,また学園を訪ねられた方が,知人から話を聞いて学園の取組みに夢を持たれた方が内容を確められて就戦されています。

 茗渓学園は筑波研究学園都市にあります。外国人の客員教授・研究員の方々からの先生希望問合せも多くあり,継続して取組めることは幸いです。