持ち味を活かして

 

文部科学省・初等中等局・国際教育課長   田中 正朗    

68号巻頭言(2001年03月15日発行)

 本年1月6日をもって、文部省は、文部科学省となりました。これにあわせて、教育助成局 海外子女教育課は、初等中等教育局 国際教育課に生まれ変わりました。国際教育課においては、これまで海外子女教育課で実施していた海外子女教育、帰国子女教育及び外国人児童生徒教育に係る業務に加えて、初等中等教育に関する国際理解教育(外国語教育の振興を含む)及び国際文化交流に係る業務を行うこととなりました。これにより、今まで以上に種々の施策を連携して、政策目標の実現に総合的に取り組んでいくことが可能となりました。私自身、この省庁再編のメリットを活かして、既存の施策の見直し、新たな施策の立案を進めていきたいと考えています。

 昨年12月に教育改革国民会議の最終報告が内閣総理大臣に提出されました。これを受けて、文部科学省では、本年1月、教育改革推進本部を開催し、「21世紀教育新生プラン」を決定しました。「学校が良くなる、教育が変わる」と副題を付されたこのプランにおいては、教育改革に関する主要施策や課題及びこれらを実行するためのタイムスケジュールを明らかにしています。今回の教育改革の議論においては、海外子女教育、帰国児童生徒教育及び外国人児童生徒教育を直接取り上げたところは少ないのですが、その趣旨においては、反映すべき点が多々あると考えています。例えば、主な政策課題として、「教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる」が上げられています。在外教育施設へ派遣される教員の任期については、これまで原則として一律3年間とされていましたが、平成13年度派遣教員から、任期を当初2年間とし、その後評価に応じて、年度ごとに更新し、最高2年間の任期延長を認めることとしました。

 すなわち、評価に応じて、任期が2〜4年間の範囲で弾力化されます。教員の評価の仕組みについては、平成13年度中に検討しますが、基本的には在外教育施設の校長及び学校運営委員長が評価の責任をもつことを想定しています。従って、これは「校長の裁量権の拡大」にもつながります。もちろん、在外教育施設に派遣される校長及び教頭自身も、学校運営委員会から評価される対象となります。

 

 外国語教育の振興については、「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」の報告書が本年1月に町村文部科学大臣に提出されました。中学校及び高等学校の新しい学習指導要領において、外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成や実践的コミュニケーション能力を養うことが目標とされています。これを受けて、今まで、文法訳読中心の授業とか、教師の一方的な授業が多いといわれていた英語の指導方法の改善が必要とされています。すなわち、生徒の学習段階や学習状況に応じて、いろいろな指導法を取り入れて行うこと、例えば、帰国生徒や外国人生徒が在籍する場合は、彼らを授業の中で活用したりすることも考えられます。また、小学校においては、「総合的な学習の時間」で国際理解に関する学習の一環として英会話を実施する学校も今後増えてくるでしょう。そのような学校においては、海外での経験が豊かな派遣教員経験者は、英会話学習担当教員やその指導者としての役割も期待されることと思います。

 本年2月に「平成12年度日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況等に関する調査」結果がまとまりました。平成12年9月1日現在で、日本語指導が必要な外国人児童生徒の数は、平成11年と比べてほぼ横ばいの18,432人でした。しかし、在籍する学校数は増加し、5,235校となりました。すなわち、外国人児童生徒が、日本国内の学校により広く分散化する傾向が見えます。外国人児童生徒を国内の学校に受け入れ、日本語指導を中心とする学校への適応を進めていくことが、より多くの学校で必要となってきています。この点に関しては、最近、国会で議論になっており、今後一層力を入れていくべき分野といえます。この面でも、派遣教員の経験者の方々は、中心的な役割を演じられると思いますし、単に外国人児童生徒の適応という観点だけでなく、積極的にその状況を活用して国際理解教育を進めていくことが可能と言えます。

 海外子女教育の重要性は変わるものではありませんが、国内の教育における派遣教員経験者の役割は、一層増大しつつあると感じています。全海研が、その期待に応えて、ますます研究活動等を活発に行われることを祈念しております。