第2分科会「異文化理解」
バンコク日本人学校における多文化理解教育
高梁市立落合小学校  教諭 田村 嘉啓
1 はじめに
 私は,都窪郡早島町立早島小学校で3年間,その後バンコク日本人学校へ派遣となりバンコクで3年間それぞれ国際理解教育に取り組んできた。早島小学校での国際理解教育は,国内における国際理解教育であり,バンコク日本人学校における国際理解教育は,海外に住みながらの国際理解教育である。それぞれの学校では,子どもたちが学ぶ場が異なっている。しかし,目指すものは,同様で,子どもたちに国際的な資質を養うことである。そこで,それぞれの実践を比較することやそれぞれの実践から感じたことを通して,より充実した国際理解教育について考えたい。
 
2 バンコク日本人学校で取り組んだ現地理解教育の様子
 バンコク日本人学校は,大正時代に設立された世界で一番古い歴史をもつ日本人学校である。バンコクにすんでいる日本人は,現地で店舗等の経営をされている方,駐在員として家族とともに住んでいる方などを合わせ,2万人を超すといわれている。そのため,バンコク日本人学校は,常に1700人程度を推移する児童生徒が通学する,大変大きな規模の学校である。
 ここに紹介するのは,バンコク日本人学校で私が担任した5・6年生での実践である。
 (1)交流学習会について
    ・年一回,隔年で日本人学校と現地校を当番校として行っている。
・5・6年生は,バンコク市内にあるシーナカリン大学附属小学校を相手校として 長年交流を続けている。
@交流の様子(写真)
 ・日本の遊び紹介(子どもたちがグループに分かれ,タイの友達に教える。)
 ・タイの文化紹介
   A交流学習会後の子どもたちの感想から
 私は,この交流学習会を毎年楽しみにしています。私は,学校で習っているタイ語や英語が苦手だけど,知っている言葉を使ったり,身振り手振りで表現したり,がんばって話をしました。これからは,もっとタイ語などの勉強をがんばってやろうと思いました。
 私は,タイの友達に日本のことを教えるために,日本の文化について調べたり考えたりしました。しっかりと分かっていたつもりですが,まだまだ日本のことについて知らないなと感じました。私は日本人なので,もっともっと日本のことを勉強していきたいと思いました。
   子どもたちの感想は,上記のような内容のものが多かった。子ども達は,タイの子ども  たちと触れ合うことを通して,『タイの子どもたちと友達になりたい。』という気持ちを  もち,「より上手にコミュニケーションがとれるようになりたい。」「知っている知ってい  ると思っていたが,日本のことについてよく知らなかった。日本人なのだからもっと日本  のことについて知らないと。」という考えをもったようだ。
   このように人と触れ合い,人と仲良くなろうとすることは,子どもたちにその人のこと  をよく知ろうと努力させたり,自分について改めて考えさせたりすることにつながってい  くと感じた。
 (2)総合的な学習について(昨年度の実践から)
   学年のテーマ 「タイにすんでいるぼくたちのくらしの中の再発見」
 この総合的な学習では,webページの作成にも取り組んだが,目指したのは,webページを作ることではなく,普段目にするような事柄をもう一度よく考えてみることにより,タイの人びとや文化を尊重することができるようになることである。そして,タイにすんでいることを誇りに思うことができるような子どもを育てることである。
 
3 国内における国際理解教育と海外における国際理解教育
 バンコク日本人学校赴任前は,海外においては,日々の生活そのものが現地理解であるため,簡単に国際理解教育に取り組むことができるだろうと考えていた。しかし,海外で行うときにもいろいろな難しい面があった。そこで,国内と海外でのそれぞれの国際理解教育について考えたい。
 まず,国内で国際理解教育に取り組むときには,国の様子や人びとの生活の様子等を図書やビデオ,インターネットによる調べ学習が中心となると考えられる。このような調べ方をするとき,内容がうまく構成されているため,児童が自分自身の考えをもちやすく,調べた内容をまとめやすい。しかし,児童の見方や考え方は,そのような見方や考え方に影響されたものになる。また,そこに書いてある文章の読み取りなどが中心となってくるので,表面的な学習になりやすいといった問題点があると考えられる。
 次に,海外赴任が決まったときには,児童が興味・関心をもった内容についていろいろな体験活動をさせたかったが,安全面の確保などから,なかなか校外での活動はできなかった。そのため,実際に児童が調べ学習を始めると,国内と同じように図書やビデオなどの教材を多く使い,まとめていこうとする姿が多く見られた。そして,国内における調べ学習と大差ない表面的に理解しただけの内容も多く見られた。しかし,普段から,いろいろなことを見たり聞いたりしているため,話し合いの時間を設ければ,今までと見方を変えて,現地理解を深めていくことができた。そして,児童がタイに愛着をもつことができた。反面,内容を深く掘り下げようとするとき,どのように扱えばよいか迷う内容も出てくるなどの問題点もあった。
 
4 終わりに
 今まで国際理解教育に取り組んできて,国際理解教育を進めるときには,人のもつ力が大変効果的であると感じてきた。バンコク日本人学校での学習においては,人との関わりを通して,子どもたちの心が育ったように,国内でも,早島小学校の児童が,中国にホームステイに行ったとき,中国をよい国だと感じて興味を深めたと同時に日本人としての自覚をもつという経験をした。
 国際理解教育では,すべての人びとが同じ地球市民として,互いを尊重する気持ちを育てることをねらいの一つとしている。私は,国際理解教育を通して,児童には,自分自身の郷土をよりよく理解し,自分の郷土に誇りをもち,そして,外国の人びとの郷土をも尊重することができるような心をもってほしいと考える。また,ある国にこだわりをもって調べ,その国を尊重できるようになったとき,ほかの文化に対してもその背景を考え,またその国を尊重しようとする気持ちをもつことができるようになると考える。そのためにも,単元を構成するとき,人を通して,国を見ることができるような活動を取り入れていきたい。
 バルセロナ日本人学校における異文化理解
                               神郷町立 新郷小学校                               教 諭    元長重人
                             
1.スペイン・バルセロナ・バルセロナ日本人学校
  位置:イベリア半島の4/5  面積:約50万?
  人口:約4000万人, 
  産業:農業が盛ん(小麦,オリーブ,葡萄→ワイン,一部地域で米作りもさかん)
  文化:闘牛,フラメンコ,サッカーが盛ん ローマ・アラブなどの遺跡多数
 
 (バルセロナ)スペイン1の工業都市
  ○地中海に面したスペイン第2の都市 人口:約150〜180万人
   カタルーニャ州の中心(カタラン語とスペイン語が公用語)
     「我々はスペイン人ではなく,カタラン人である。」(民族意識)
  ○ピカソ,ミロ,ガウディ,ダリなど美術作品が豊富 
  ○サッカーは盛んだが,フラメンコや闘牛は不人気
  ○在留邦人:約2000〜3000人(駐在員:製造業中心)
 
 (バルセロナ日本人学校)
  ○児童生徒数:90〜120人
○語学教育:西語…週2時間(全児童生徒に対してスペイン人講師が指導),
      英語…週2時間
      (小学5年生以上に対してイギリス人アメリカ人講師が指導)
  *ボランティア活動など協力的な保護者
 
2.現地理解教育   国際理解は,自国(文化)理解から】
 ○現地交流  …現地の行事に参加して現地に親しむ姿勢を養う。
         (マラソン大会参加,サンタルシア市見学,カルナバル参加,
          フェスタマジョール参加
 
 ○国際理解の日…現地や日本の文化に親しむ機会をもつ。
         (市内見学,スペイン民舞「セビジャーナス」「バストーネス」,
          スペイン料理「ガスパチョ」「パエージャ」「トルティージャ」
          日本文化「華道」「茶道」「日本舞踊」   など)
          *在留邦人(保護者など)や現地指導員などを招聘
 
 ○現地校交流 …現地公立校の子どもと触れあう機会をもつ。
          低学年・高学年・中学部に分かれ,現地公立校との交流会(訪問と          招待の年2回)を開く。
        *現地校の子どもたちの誤った日本(人)観 →
         「日本を正しく伝えよう! 日本を好きになってほしい!」
                 →「日本の文化をもっと知ろう!」 
         活動内容:剣道,けん玉,はねつき,習字,太鼓,生け花 など
         昼 食:自分たちで用意したこともあるが,
             保護者が卵焼き・おにぎり・焼きそばなどを準備
 
3.鼓響 -kokyo- (バルセロナ和太鼓集団)の活動
○現地素材(ワイン樽)を利用した樽太鼓
 
○自信をもって人に伝えられる→感動→日本人学校の伝統文化へ→縦のつながり
           (表現できる)
 
日本人としてのアイデンティティーの形成→国際社会に生きる日本人