「バンコク名物ベスト2」 岡山大学附属中学校
教諭 梶原 敏
まず最初に自信をもって挙げることができるのが,『交通渋滞』。市内の主な道路は四六時中渋滞している。一昨年のアジア大会の開催に伴い,高速道路が整備され,多少流れがよくなったが,それでもすぐに渋滞する。電車や地下鉄(現在,地下鉄の工事中)といった公共の乗物が皆無で,すべて路面を走る車やバスに頼っているのだから渋滞も当然である。
(昨年,バンコクの一部の地域で,モノレールが建設された)そしてそこで発生する問題が排気ガス公害と騒音公害。十数年前は,渋滞している道路の空気は排気ガスで紫色になっていて,冷房なしのタクシーに乗ったりすると,おおげさではなく,呼吸困難になりそうだったそうだ。最近は規制が厳しくなったのか,それほどまでには感じないが,バンコク市内を一日歩くと,髪の汚れているのが分かるほどだ。 交通ルールはあって無きが如し,というのも恐ろしい。3車線のはずの道路を車が4列になってひしめきあって走っているとか,ウインカーも出さずに車線を変更するなどというのは日常茶飯事だ。だから,自分運転をするとき(普通運転手が常に運転する)は,相当の注意が必要だ。特に,モーターサイ(単車)が車と車の間を傍若無人に走っているのには,在タイして最初の頃,随分驚いた。こういう交通事情だから事故も多く,内臓が破裂したり,頭が割れ出血している現場を,何度となく見てきた。
もう一つバンコク名物として挙げられるのは,『洪水』であろう。以前,バンコクは東洋のベニスとか水の都とか呼ばれ,運河が縦横に続き,船が往来していたそうだ。その後,バンコクの自動車保有台数が余りに増え続けたので,バンコクの運河はほとんど埋め立てられて道路になった。そして,運河に代わって,新しい名物になったのが洪水である。バンコクはもともとメナム河下流の低湿地,いわゆるゼロメートル地帯にできた街なので,排水のために運河は重要な役割を果たしていた。運河をつぶして道路にしてしまう時に,それに見合っただけの排水溝を用意するという配慮がなかったために,6月から10月の雨季の時期には,2時間ほど降った集中豪雨のために,膝上位までの洪水状態になる。あちらの雨というのは,台風接近で大雨警報が出たときの雨のようで,傘をさしてしのげるというものではない。タイ人は,たいてい店などの軒下に一時避難し,雨が止むのを待っている。私の住んでいたスクンビット39(通りの名前)周辺は,他に比べさらに土地が低いようで,一時間もスコールがふれば,街は湖のような状態になる。車に乗っていると,モーターボートに乗っている気分になるが,エンジンが止まりはしないかと心配になってくる。運転手もあわててエアコンのスイッチは切って運転している。この雨は,たいていは夕方から夜にかけて,一時的に降るだけで,朝になれば,何もなかったかのように水は引く。ところが,年によっては朝になっても水が引かず,休校となることもあった。