「野菜作り」 ロンドン日本人学校 教諭 藤井 浩
「先生,こんなに大きいエンドウマメだよ。」
「掘っても掘ってもジャガイモが出てくる。」
「キャベツにアオムシがいっぱいいるよ。」
ロンドン日本人学校の畑(以下ファーム)で小学部2年生の歓声が響いています。4月から生活科や総合的な学習の時間(ロンドンタイム)で育てている野菜の収穫の日です。
4月,発育測定に合わせて体の成長について考えたことからこの学習が始まりました。子どもたちから出たさまざまな意見の中の「好き嫌いなく何でも食べる」ことを取り上げ,自分たちで野菜を作り,それを食べようということになりました。
最初は畑作りです。3年前に芝生だった所を作りかえた畑ですが,まだまだ粘土が多く,肥料が不足しています。そこで,腐葉土を大量にまきました。家庭で野菜を作っている人に「ロンドンの畑には馬糞が一番。」(なぜかは分かりません)と聞き,近くの乗馬学校から無料で馬糞を分けていただき,それも畑にまき,子どもたちと畝作りをしました。 その間にどんな野菜を育てるのか子どもたちと話し合いです。結局「カレーを作って食べたい。」ということになり,ジャガイモ,ナス,ピーマン,ニンジン,タマネギの種や苗を植えました。さらに,サラダも食べようということで,トマト,キュウリ,エンドウマメ,キャベツ,パセリ,メロンの種や苗を追加しました。また,事務局の方からシソ,ラナビーンズ(ソラマメのような大きさの豆),セロリ,フレンチトマト(プチトマト)の苗をいただき,あっという間に約100uのファームがいっぱいになりました。キュウリを買ったはずなのにコジェット(ズッキーニ,キュウリを大きくしたような野菜)がまざっていたり,ジャガイモをどれにするか考えたりと購入段階から悪戦苦闘しました。フライドポテトがご飯がわりというくらい英国では大量にジャガイモを消費します。そのためかどうか10種類近くのたねいもが売られていました。
育て方は日本とほとんど同じです。私も日本では野菜を作っていました。ナスやトマトは余分な芽を取る,ジャガイモは元気な茎だけを残すなどの知識はあります。しかし,原則として子どもたちが自分で調べるなどして意見が出されない限り教師は手を出さないことにしていますので,基本的には水と肥料をやっていればOKです。水道からファームまで約50mあります。子どもたちはペットボトルで何度も往復しなければならず,夏休みは教師がホースをのばして水やりをしました。今年は天気が非常に良く雨が少なかったため草ぬきと水やりは汗をかきながらの作業になりました。その間も柵(運動場からのボールよけ),案山子(リス,キツネ,カラスよけ),全校に畑を大切にしてほしいと訴えるポスターを作りました。
こうして育てた野菜は大豊作で7月と9月に収穫し,上記の歓声へとつながります。苦労して作った野菜を使って,また苦労してサラダとカレーを作りました。おいしくないはずはありません。子どもたちは大満足です。
さて,教師側はそろそろファームを閉じたいと考えているのですが,子どもたちが許してくれません。次は何を植えようかと楽しみにしているようです。喜ぶべきか悲しむべきか・・・。何にしてもこの学習で思いやり,感謝,生命尊重の気持ちが育っていくことを願っています。3学期はこれをもとに自分の生い立ち日記を作る予定です。