「ドイツでの国際理解教育」      ハンブルグ日本人学校      
                            教 諭  細川 博資
 
 7月に日韓共同開催でサッカーのワールドカップがおこなわれました。ここドイツではたいへんな熱狂ぶりで,当然開催地である日本・韓国への関心も高まりました。そんな中,私の勤める日本人学校にも日本を紹介して欲しいという申し入れがハンブルグ大学からありました。
 中学部の先生方(4名)で相談して,何をどのような形で紹介できるのか検討しました。また,生徒達とも「日本的なものとは何か」を相談をして,お茶,折り紙,着物の着付けの3つのプロジェクトを立ち上げました。
 交流の計画,準備,交流時間はすべて総合的な学習の時間を当て,進めていきます。最初の問題は,折り紙は別にしても,お茶,着物の着付けができる生徒がひとりもいないことでした。そこで,着物の着付けができる先生に着物の着付けを習い,保護者の方の中から,お茶のお点前のできる方に講師として来ていただいて,お点前を教えていただく活動から始めました。
 次の問題は,大学の食堂で食事に来ている大学生に紹介するということでした。相手が日本のことを知ろうと思って来ているとは限らない場所での活動ということで,言葉も十分でない生徒達(先生方も)の不安は高まりました。これについては,生徒達の考えで,ポスターなどを掲示して何をしているのか一目でわかるように工夫しました。
 そして交流当日,小雨の中,お茶の道具,着物などを携えて大学の食堂に入りました。日本の紹介を始めると,まずは食堂の従業員の方(お昼には少し早かったので時間があったのでしょう。)が集まって来ました。浴衣を着付けてあげると大喜びで生徒達と写真を撮ったり,調理場の仲間に見せに行ったり・・・。大はしゃぎでした。お茶は,最初緑色の液体を飲むことに抵抗があったようでしたが,数人の大学生が飲んだ後に「おいしい!」と言ったこともあって行列ができるほどでした。折り紙はこちらでも人気が高く,マニアックな大学生が始めから終わりまで生徒達に聞きながらいろんなものを作っていくなど生徒達も驚いていました。
 この活動を通じてわかったこと(生徒の感想文から)
 日本的なものといっても,実は自分たち日本人もよくわからない状態があった。お茶の心などについて質問されてもお茶の先生に教わったことを言うだけだった。自分たちもこの活動で少し日本のことがわかったような気がする。
 最初心配していた言葉の問題は,自分たちが思うほど重要ではなかった。話そうという意志があれば,相手は大学生,ドイツ語はもちろん英語のわかる人もたくさんいた。日本語学科の学生さんは,片言の日本語で話しかけてくれた。難しいことになると私たちの方が自然にドイツ語で説明していて自分でも驚いた。
ドイツ(ハンブルグでの生活)
 私たちは子供4人を連れての赴任でしたので,衣食については特に心配しながら赴任をしました。ドイツらしいことを何かレポートしようと思うのですが,子供達が皆日本人学校に通っているもので,ふれ合うのは日本人ばかり,あまりドイツの文化には触れていないのが現状です。
 でも,ドイツらしさ,ドイツ人の良いところをいくつか書いてみたいと思います。
@まじめ(融通が利かない)
 自分の仕事にはとにかくまじめに取り組む人が多いようです。朝の6時過ぎに出勤し3時頃には仕事を終えて家に帰る。土,日は休み。これがしっかりできている国です。時間を延ばしてはたらくこと,余分な仕事などは決してしません。夜開いているお店もありませんのでものを買い忘れるとたいへんです。
A親切
 人が困っていると必ず声をかけてくれます。駅のホームなどでもベビーカー,車いすの方などにもとにかく親切,何も言われないうちに声をかけて助けてあげています。私たちも近所の方にゴミを捨てに行く際車で送っていただいたりしたこともあります。ただし,庭の整備などをちゃんとしなかったり,日曜日の午後に外で騒いでいたりすると,ずいぶんしかられることもあります。とにかく,よい意味で他人のしていることに気をつけているようです。
B古いものを大切にする
 これは,家からしてそうなんですが,部屋の中のペンキの塗り替えを5年に1度おこないます。そうしながら,ずっと住み続けています。100年,200年,古いものだと500年近く昔のものも使っています。
 その他,車などもベンツなど有名な会社がいっぱいありますが,良い車(日本人の私からするとよく故障をしているように思うのですが)を買って長くのるのがこの国のやり方のようです。
Cサッカーが盛ん
 ワールドカップ(ドイツ語ではヴェルトマイスターシャフトと言います。)で2位になる国,道路の歩道をリフティングしながら歩いている小学生がいたり,ちょっとした空き地にはサッカーのゴールがあったり,たいへん盛んです。面白いのは日本の草野球みたいに,大人達もサッカーを楽しんでいることです。各地区にサッカーのクラブがあって時々試合もあります。試合後はビールを飲んで話をして,遅くまで過ごしています。
 
 最後に1つだけ住んでいての感覚なんですが(個人差があるので私の感覚ですが)自分の幼かった頃の日本がここにあるような気持ちがしています。効率ばかりをいわないでよいものを作ろうとするところ,近所づきあいも個人を大切にしながらもちゃんとおこなっているところ,時間の流れも日本に比べるとずいぶんゆっくり流れているような気がします。