会員の皆様,お元気で御活躍のことと存じます。
 今年の梅雨は,ことのほか長引きプールの回数も少なく子ども達にとっては残念な学期末だっただろうと思われます。しかし,今年ほど梅雨らしい梅雨も珍しく,日本独自のこの季節がなにものにも代え難いと思うのは私だけでしょうか。雨に打たれているアジサイの花は本当に美しいものです。日本という国は四季それぞれに趣のある国だなあと痛切に感じます。
 さて,本年は新たに4人の先生方が無事大任を果たされ帰国されています。任地におきましては幾多のトラブルと災難に見舞われつつも,海外在留子女教育に情熱を燃やされ,その職責を全うされたことに対し敬意を表します。また,それを支えていただいたご家族の皆様にも感謝申し上げます。皆様方の3年間の艱難辛苦に耐えた精神力もさることながら,かの地での毎日が国際交流といった異文化体験は誠に貴重な財産であると思います。
 今後は各勤務校やその地域におきまして貴重な体験をもとにしてのご活躍をお祈りいたしております。
 さて,今春早々に国際交流社会に大きな波紋や混乱を引き起こした問題がありました。SARS(重症急性呼吸器症候群)がそれです。
 私の勤務している学校で次のような事例がありました。
 6年生が5ヶ国の方々をお招きして,総合的な学習の異文化理解や体験をする学習を計画しました。ところがそれを伝える学級通信を出すやいなや,学校のメールに数通の苦情が舞い込んできました。学校は何を考えているのかといった強い調子のメールでした。その心配が分からなくもないですが,あまりにも性急な判断と過剰反応ではないかなと思った次第です。そこで,丁寧に今回来校される方々が大学院生や岡山市役所国際課に勤務され,日本に長期滞在している方々であることを説明し,ご理解いただき事なきを得ました。
 人と物と情報が脅威的な速度で飛び交う現代社会において,上記のような事実はある意味で警鐘とも言えるかもしれません。良きにつけ,悪しきにつけ我々の身辺は地球的規模で急進的に変革していると思われます。環境破壊,エネルギー,国際紛争,難民,テロ等など枚挙に暇がありません。このような時代と社会情勢の中で子どもたちに地球市民としてどんな力を身につけてやればよいのでしょうか。学校教育現場に携わるものとして,何ができるのかを真剣に問い直さなければなりません。それは深い自国に対する洞察と国際感覚や資質を備えた人材の育成では無いでしょうか。また,国際理解とか国際交流とか言葉は既に定着した感があります。しかし,その根底において大切なことは人と人が相互に理解するといった,人権尊重意識が大切なのではないでしょうか。思い込みや外観にとらわれず人間として判断すべきと思います。これからの国際社会で豊かに生きていく子どもたちの人権感覚を養うことが,今後国際交流や国際理解の場面で求められる資質なのではないでしょうか。
 私ども岡山県国際理解教育研究会もホームページ開設など新規に取り組んでいる事業もありますが,更に新たな挑戦を開始したいところです。会員諸氏の積極的かつ前進的なご意見を賜りたいと存じます。
 本年も本会の研究大会を開催を予定しております。本年度は岡山地区担当になっており,12月9日の火曜日に岡山市立中央北小学校(元岡山市立南方小学校)を会場にして開催いたします。分科会は従来どおりの予定ですが,授業公開の分野では中央北小学校のご協力を得て「総合的な学習」より英語教育について2授業を公開していただく予定となっております。会員諸氏におかれましては是非ともご参加いただき研究会が有意義なものとなるようご支援をお願いいたします。
 また,来年になりますが1月25日(日)に岡山県国際交流センターにおいてアジアNGOネット会議が開催されます。この会におきまして昨年度お世話になった久世町の米来小学校より国際理解分科会としての研究発表が予定されています。この会は国際会議でパリのユネスコ本部よりも代表が来日する事になっております。研究会同様に多数のご参加をお願いいたします。
 最後になりましたが,本年度も本会に対してご支援・ご指導をいただいております「福武教育振興財団」をはじめ,顧問の先生方に対して厚く御礼申し上げます。
 会員の皆様のご健康とご活躍を期待しつつ。    敬具
岡山県国際理解教育研究会長
赤松 康弘
(岡山市立平島小学校長)