バルセロナでの教育」            

バルセロナ日本人学校
教諭  元長 重人
 
○4年目として
 本校の児童生徒数は,2001年10月現在で105名(小学部83名,中学部22名)です。100名を切ることはあっても,ここ数年横ばい状態です。基本的に1学年1学級を保っています。派遣教員は,校長,教頭,教諭11名で,このうち,派遣教員の年次人数に格差があり,我々平成10年度派遣教員は,教頭を含め7名でした。(以前は8名であったが,校長が残り,7名となった経緯がある)派遣教員のうち半数を超える数が入れ替わることは,校務に支障を来すということから,今年度は2名残り,来年度1名残る予定です。これは,入れ替わる人数の是正(均等化)を行おうとするものです。そこで今年度は私を含め,もう1人残ることになりました。折しも今年度より「教員派遣規則」が改正され,13年度派遣教員から派遣委嘱期間が3年から2年に減り,評価システムが導入され,最大2年間の延長が可能になりました。(ただし,4年というのは,よほどの理由がない限りないと聞いている)
 4年目を過ごすに当たって心がけたのは,1,2,3年目の教員のサポートをすることでした。普段の生活での情報提供や助言はもちろんのこと,学校では自分が前にでるのではなく,一歩引くことで物事を冷静に見たり,サポートしたりしやすいと考えました。特に,2年間続けてきた体育主任は引き継ぎの意味で,新しく来られた先生に代わってもらい,私は補佐に回りました。ただ,6月はじめに運動会があったり,毎日の業間体育を行わなくてはならないため,1年目の教員には負担が大きいということで,1学期はほとんど私主導で行いました。ことあるごとに話し合い,共通理解を図るよう努めました。また,可能な限り次年度へ具体的な見通しを持ってもらえるよう,文書だけではない,形に現れた引き継ぎができているよう配慮を心がけています。 
 
○バルセロナにおける現地交流
 今年度,バルセロナ日本人学校や私自身が行った現地交流について紹介します。
La Festa Major (フェスタ マジョール:カタラン語)
スペイン語では,la fiesta mayor(フィエスタ・マヨール)。大きなお祭りの意。
    Festa Major
スペインには,それぞれの町にお祭りがあります。6月29日,バルセロナ市の北に位置し,日本人学校があるサン・クガット市では,「サン・ペドロ」というお祭りが開かれます。ペドロは,キリストの12使徒の一人にあたり,キリストの死後,エルサレムの町でヤコブやヨハネとともに,最初の教会をつくった人物です。その人を祭る町がサン・クガットです。
 この時期,どの地域でも夏が来たことを祝うお祭りが開かれますが,サン・クガット市もこの「サン・ペドロの日」を
中心に,フェスタ・マジョールとして全市にわたって様々な催し物が開かれます。
 今年の7月1日(日)に本校児童生徒が,「日本の文化を知ってもらおう!」と,このフェスタ・マジョールに今年初めて参加しました。午前10時という時間帯(日曜日の午前中は,ほとんどの人が寝ている)にもかかわらず,市長さん・教育長さんをはじめ,たくさんの方々が見に来てくれました。
 発表内容は,日本国国歌斉唱・ソーラン節・剣道・習字・カタルーニャ州歌斉唱です。
 全児童生徒による国歌斉唱の後,小学部4〜6年生が運動会で発表した「ソーラン節」を披露しました。次に中学生による剣道と習字です。剣道では基本技と剣道形を行い,習字ではスペインやカタルーニャをひらがな・カタカナ・漢字で書き,最後に「一期一会」と書いた巨大文字を紹介しました。
 今年度初めから市の方へ打診はしていたものの,なかなか返事がなく,1ヶ月前になってやっと了解を得ました。その後も会場の変更があったりして,はっきりしたものが見えませんでした。(スペインではこういうことがよくあります)学校自体がこのような形で参加することもこの地では珍しいようで,市側も判断するのにも時間がかかったようです。また,その頃は運動会の練習などがあり,本番2週間前になってやっと練習を開始しました。また,その間に,小学部5,6年生は,2泊3日の校外宿泊学習があったり,中学生は期末テストがあったりしたため,練習は十分とは言えませんでしたが,限られた時間を有効に使い,本番に臨みました。子どもたちも一生懸命がんばり,当日は大好評でした。現地交流をするとともに,子どもたちが紹介する日本の文化を少しでもわかってもらえたことでしょう。
 Torre
 カタルーニャのお祭りでよく見られるのが,このTorre(人間タワー)です。あっという間に,6段,7段と上に上に上っていきます。今回は,サンクガットの修道院前の広場で行われていました。これには,男の人だけでなく,若い女の子や幼い子どもも参加します。見ていてもこわくなることがあります。でも,成功すると拍手喝采です。

 Corre Foc
 このフェスタ・マジョールの期間中(6月28日〜7月1日)は,街の至る所で催し物が開催されています。ロック,ジャズ,クラシックのコンサート,エアロビクス,空手,テコンドーの紹介,マジックショー,そして,昨年本校職員有志で参加したパエージャコンクールなど,朝9時から次の日の午前3時頃まで賑わいます。本校もその一会場で発表しました。
 こうした祭のメインプログラムに「Corre foc(コーレ・フォック)」があります。これは,火の粉をかぶったり,火の上を跳んだりして厄を払うという意味から始まったもので,悪魔の格好をした人々が,太鼓のリズムとともに,花火を大きく振り回したり,花火を仕掛けた竜の山車を出したりして,街を練り歩きます。
 私達はそばで見ただけですが,これには誰彼関係なく参加することができます。でも,とても危険です。なので,「ハンカチで頭や首を覆うこと」「綿の長袖や長ズボンをはくこと」などと注意されるとともに,通りの各家々には,「シャッターを下ろすこと」「燃えやすいものやパラソルなどは,片づけておくこと」などとポスターで呼びかけられています。
 最初は,空砲から。何十発ものすさまじい音。そして,走り回る悪魔たち。それに伴う花火。以前は観客の中にも入ってきたとか(最近はだんだん安全になったそうです)。しばらく街を練り歩いた後,最後はメーン会場にて,仕掛け花火とともに,花火のシャワーを浴びます。この火の粉が散って,私のポロシャツが焼けてしまいました。こうして4日間にわたるお祭りが終わり,多くの人は,バカンスに出かけるようです。
 このころ他の地域でも,火の上をはだしで歩くといったことをニュースで放送していました。日本でもこういうことをするところがあったような気がします。所かわっても…。ただ,あまりにも危険!と思ったのは私だけでしょうか?
 
 Expo JAPAN '01 
 「Expo JAPAN '01」(日本文化祭)が7,8日の2日間,バルセロナ市内で開催されました。これまでこういった日本文化祭が行われていなかったので,ある意味では画期的なことです。
 日本人だけでなく,バルセロナ市内や郊外で日本の文化に親しんでいる人たちもそれぞれのグループで発表や展示を行っていました。カラオケ大会があったり,空手や柔術など様々な発表がありました。コミック漫画や雑誌,日本についての書籍等が売られ,特に人気がありました。今,スペインでは,日本食ブームということもあり,多くのスペイン人が訪れていました。特に1日目は,中に入れず行列ができていて,諦めた日本人が帰ってきたという話も聞きました。
 今年赴任されてこられた先生(六段)と私(五段)で,剣道の紹介を依頼されました。フェスタ・マジョールは子ども中心で行ったので,小太刀の形3本でしたが,今回は我々のみの参加だったので,太刀の形7本を加え,基本的な稽古を紹介しました。また,併せて剣道の歴史・特性・使用する武道具・礼法・作法・試合方法などを説明しました。
 特設舞台とマット敷きだったので,十分なことはできませんでしたが,何とか紹介できたのではないかと思います。
 興味を持ったスペインの方々から質問がでたり,武道具を身につけてみたいという要望があったりしました。初めて身につけた女の子は「わあ,うれしい!」と感動していました。
 バルセロナには,いくつかのグループが剣道を行っているようですが,夜10時ごろから練習を始めたり,家から遠かったりした関係で,私は数回しか練習に参加できませんでした。また,空手や柔道などのようにメジャーではないので,こちらの人々もどこで行われているかもあまり知られていないようです。
 その他,日本人学校の子どもがけん玉をしているのを見て,主催者が突然参加を依頼したようです。3年生と4年生の2人(弐段と参段)が舞台に立ちましたが,物怖じせずに,難しい技もすいすいとやっていました。多くの観客から拍手をもらっていました。もう,私より遙かに上のレベルです。