修学旅行での交流会           

香港日本人学校中学部

教諭 原田 理恵

                                

 香港には小学部(香港校・大埔校)・中学部という3校の日本人学校があります。私の勤務校である中学部は,香港島北部の丘の上に位置しています。ここでは現在約320人の生徒が学んでおり,広い運動場がないことをのぞけば,国内の中学校とほとんど変わらない環境での教育活動が行われています。

今回は,中学部で行っている交流会について紹介したいと思います。海外で生活しているということで,地元の人と交流する機会は多いのではないかと思われがちですが,ここ香港は日本人がとても多く,生徒たちもほとんどが日本人社会の中で便利で快適な生活を送っています。中学部では4回の交流会を行っていますが,2年生で行う交流会の一つに修学旅行先の北京での交流会があります。北京市内で唯一日本語を勉強している月壇中学校との交流は今年で11回目になり,広東語の香港とは異なる,北京語の世界を生徒たちに教えてくれるすばらしい機会だといえます。

<開会式の様子>


今年度の月壇中学校との交流会の内容ですが,昨年度行った香港の宣基中学校との交流会後の反省を生かし,個人交流の時間を多く取るように計画しました。そのため,実質70分の交流時間をいかに有意義に過ごすかを,生徒たちにはじっくり考えさせました。自己紹介カードやグループに配ることのできる個人のネームカードも準備しました。また,学活を利用して,国際交流ディレクターによる北京語講座も行いました。この時間に初めて生徒たちは自分の名前を北京語でどう発音するかを知り,喜んで何度も練習していました。

月壇中学校との最終打ち合わせで,交流相手が3年生だということが新たに伝えられ,それまで2年生だということで準備を進めていた私たちは驚きました。でもこれは実はうれしい誤算でした。というのもこの月壇中学校3年生には,「小さな留学生」というドキュメンタリーで,日本でも紹介されたことのある張素さんが在籍しているからです。事前学習としてこの「小さな留学生」を見ていた生徒たちは,張素さんに会えるということで大喜びでした。

 修学旅行3日目の9月16日,張素さんの流暢な日本語で交流会は始まりました。グループに分かれての交流も,「言葉が通じなかったらどうしよう…」という生徒たちの不安はすぐに消えたようで,どの教室からも楽しそうな声が聞こえてきました。個人交流をじっくり楽しむグループ,スポーツで交流を深めるグループ,トランプや折り紙などを一緒に楽しむグループ…,と様々な形で交流は進んでいき,あっという間の70分でした。

「先生,実は僕,あんまり楽しみにしていなかったんだけど,思っていたより話ができてよかった!また,やりたいなあ。」これは交流後,生徒が私に言った言葉です。この言葉のように,今回の交流会は大成功で,生徒たちの心に残る良い時間が過ごせました。これは,生徒たちが「コミュニケーションをしたい」という強い気持ちで臨んだことはもちろん,月壇中学校の生徒たちの日本語能力によるところが大きかったと思いますが…。

 今回のような一度きりの,しかも短時間の交流会では「言葉」の果たす役割は大きいものだと実感しました。生徒たちが楽しい時間が過ごせたのも,「言葉」が通じたからだと思います。交流は伝えたい・分かりたい気持ちがあれば確かにできます。でも,そこに共通の言葉があるだけで交流はずっと深まっていくものだと思います。
中学部で行っている交流会にはまだまだ多くの課題があります。しかし,試行錯誤を続けながらも,これからも「言葉」の大切さに目を向けながら,生徒たちの世界を広げるために,そして何よりすばらしい経験のために交流の場を広げ,深めていけたらと願っています。

<司会をする張素さん>                        <ゲームをする生徒たち>