新生「全海研」に期待すること

 

文部科学省・初等中等教育局国際教育課長  手塚 義雅

80号巻頭言(2006年1月30日発行)

 全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会の会員の皆さまにおかれましては、日頃より、海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育、国際理解教育等の国際教育の各分野において、地域における中核的な立場でご活躍いただき感謝申し上げます。

 当課では、国際社会に通用する優れた人材を育成するため、所管の初等中等教育における国際教育の各分野において、必要な施策の充実に日々取り組んでおりますが、国際教育の各分野における有識者の方々で構成する「初等中等教育における国際教育推進検討会」を設置し、国際教育の各分野を有機的に連携させ、これまで各分野で蓄積されてきた人材や経験の有効活用を図るなどの観点から、昨年8月に報告をまとめていただきました。今後はこの「各分野間の有機的な連携」強化を大きな課題の一つととらえ、国際教育の各分野が一体となって、この課題の解決に向けた施策の充実に努めてまいりたいと考えております。

 例えば、在外教育施設の派遣教員の人事決定プロセスにおいて、国際理解教育や帰国・外国人児童生徒教育の分野で実績のある地域や学校(研究指定地域や学校等)で活躍している教員を特定の地域へ優先的に派遣することができれば、都道府県教育委員会等において、当該教員の人事をより長期的な視野に立って計画することが可能となり、帰国後の人材の有効活用の促進につながるのではないかと思われます。その他にも、連携による効果が見込める施策の見直し例が見つかるかもしれません。

また、もう一つの大きな課題として、「成果の検証(評価)」があげられます。蓄積した成果やノウハウを有効に活用していくことは重要ですが、その前に、どのような成果が得られたのか、その成果

を得るためにどのような人的・物的資源が投入され、どの程度のコストがかかったのかを明らかにしなくては、有効活用とは名ばかりのものになってしまいます。この成果の検証という課題は国際教育に限った話ではありませんが、国際教育においては、国際社会に生きる人材の育成という目標を掲げ、各分野が有機的に連携し、今まで以上に施策の充実を図った上で、目標がどの程度達成されたのかを検証していく必要があります。また、具体的にどのような手法やしくみで検証を行っていくのかも課題の一つです。

全海研の会員の先生方は、世界各地の海外子女教育の現場で貴重な経験を積まれ、帰国後は、帰国児童生徒や外国人児童生徒に対する適応指導や日本語指導を担当されている方や、地域の国際理解教育のリーダー的存在として活躍されている方が大勢いらっしゃると思います。このような国際教育の各分野にわたる教育活動を実体験された先生方は、これから国際教育の各分野において連携を深めていくための要となって活躍していただくべき貴重な人材であるといっても過言ではありません。今後は、地域において国際教育を推進していくリーダーとしての役割はいうまでもなく、施策の立案の場面や成果の検証の場面等、多方面での活躍を期待しております。

全海研も昨年11月30日付けでNPO法人としての認証を受けられたと聞いております。会の長い歴史の中で、新たな1ページが開かれました。我々だけではなく、国際教育に携わる多くの関係者から、会の活動に対して今まで以上に大きな期待を寄せられることと思います。そのような期待に応えるべく、今まで以上に、会の活動の活性化に努めていただき、国際教育の振興に今まで以上にご尽力くださるようよろしくお願いいたします。