日米における学校・保護者の責任分担対応について

      シンシナティ補習授業校 西田 富男

90号巻頭言(2010年1月20日発行)

 今まさに新型か季節性か、ニュースによるインフルの罹患者の数に耳を傾けている。本校保護者の中には「我が子に限って大丈夫だ!」と登校させている現状に、本校の様子を紹介したい。

1.インフルなどに関する保護者の責任対応について

 本校では、「緊急事態発生!」とでも言いたいほどインフルへの対応に理事会・PTA役員が中心に保護者からの情報を加味し、マニュアルを作成した。
〜ガイドライン〜現状  2009年5月8日付でHPに掲載
 (1)お子様の体調が悪いと感じた場合、登校を控えさせ、すぐに医者の診断を仰ぐ。
 (2)お子様が通っている現地校が新型インフルエンザを理由に休校となった場合、補習校への登校は見合わせる。(兄弟姉妹が別の現地校に通っている場合は、それぞれの現地校が休校かどうかで判断する。)
 (3)と(4)省略 補習校HP参照
 という内容を本校HPへアップした途端に問い合わせが殺到!ここが日本人の数人の「我が身中心の考え」ではなかろうかと思える言葉を数点拾ってみた。
  @ 医者から「完治診断書」を貰ったが・・・
  A 現地校では微熱(黙って?)でも登校しているが・
  B 親・兄妹の一人が感染したが本人は大丈夫です

     が・・
  C 熱があり現地校はダメでしたが補習校(私学?)

     なので・・
などが学校及びPTA役員へメール!理解しがたい一部の誤った「モンスターペアレント」の認識で現地校でも口にされていないか心配である。
 そこで、本校職員に近隣の現地校の実情を尋ねると「休校処置」は自然災害時のみと位置づけてあること、Q&Aは学校紹介に紹介されてありインフルエンザに関する質問は皆無とのこと。
 この地では子どもの安全面を脅かす事態が発生した場合(今回はインフルエンザの感染に関して)の規則で、「本人及び家族が感染した場合は保護者の判断で登校させない」というのが通常である。つまり他人には絶対迷惑をかけないという責任感をこの地のアメリカ人は持っている。アメリカ人の子どもが少しでも他人に迷惑な行為(行動、誹謗中傷の言葉)があれば厳しく注意を払う場面を良く見かける。例えば4〜5歳児が人前を黙って通り過

ぎる時さえ「excuse me !」「sorry!」が出る、幼児期からの「躾」でしょうか。日本ではどうだろうか?
 上記の@〜Cの件は保護者の判断と言うよりも責任感の度合いではなかろうか。アメリカ合衆国という多人種、異文化の国ならばゆえに、自分勝手な行動をすれば目立つ社会である。ある日本人児童(低学年)が微熱で登校したところ、即保護者が呼び出されて警告を受け、「退学」させられ近くの学校へ転校したとか・・多くのアメリカ人は他人を「respect」しながら自分の「status」を堅持する、家族という単位が集まって社会を構成し、自分も責任を持って地域の一員として貢献し、役割を担っているんだ、という責任感を持っている、と私の目に映った。

2.学校別ランク付などへの保護者対応について

 この地域には多数の公立と少数の私立があり保護者は学校自由選択制(日本の言葉で)で近隣校へ行こうが遠距離へ行こうが保護者の自由である。その選択する理由の中に、教育方針の違い、教員の資質の違い、宗教による違いなど多種多様な学校格差が面々とある。
また、学力調査が、小中高大学とも毎年行われて公表されるので、アメリカ人は当然その結果で選択権を行使出来るシステムになっている。各学校種ともそれなりに芸術、文化、IT、スポーツなどの特色を持っているため、一概に学力の云々で選別をされてはいないのが現状である。
 日本人保護者は、主にその地域の公立学校へ通学している。本校教員曰く「選択出来るので能力に合わせた学校が選べ、将来、何になるか職業選択まで考えられる」、「いじめなどは日本国内以上にあり、また『drug』による事件が多いが、そのための学校規則が厳守さされて人権侵害なら即警察へ通報し逮捕が当たり前であるなど安全面は保障されているので安心」だとか。アメリカ人には、日本国内で起きた生徒が授業中に校内の危険場所へ上がって落ちた事故で学校側の責任(管理職、教員が処分)など理解に苦しむのではないか。
 私自身、異質な文化で混じり合って生活することは一種の優越感があるものの、その根底には日本人として「誇り」を大事にしたいという狭い考えが横たわり、その殻から抜け出せず、世界の架け橋になれ!と叱咤激励しながらまだまだ未熟な自分がいる、現在である。
 保護者の中には、長期及び短期の滞在者の考えがあり、不意に出る「ニアミス」をしながらも異質文化にとけ込もうと努力がされている昨今ではなかろうか。