世界基準での人材育成のために 

      NPO全海研・会長 滝 多賀雄

91号巻頭言(2010年7月20日発行)

 在外教育施設に教師派遣が1962年一名派遣され、1963年二名、1964年四名、1965年九名、1966年二十名と行われ、当初は教育系大学が派遣を担当し学校担当制で実施してきた。その後、1978年から公募制度により、全国都道府県からの派遣が行われてきた。その際には、休職、職専免、研修等都道府県により、派遣への待遇は様々であり、変遷を重ねてきた。何はともあれ、現在累計派遣数は、14003名にもなっている。全国小中学校数を約33122校(21年度)とすると二校に一校には海外派遣経験者がいることになる。
 これらの方々が、それぞれ派遣地の様々な資料、写真素材等を収集しているのではないでしょうか。しかし、派遣された経験を生かして、継続的に、身近な児童生徒へ国際理解教育を施していますでしょうか。
 派遣教員が帰国時には、意気込んで張り切って国際理解教育を行おうとするが、数年をたつと先細りになり、だんだん推進意欲が衰退している姿を見るにつけ残念でなりません。
多くの資料も自分一人で行っていると同じ視線での教材化になってしまい、いつの間にか、「○○先生は、また△△△△△の話だってよ」と負の傾向に見られていることを見かけます。ここで派遣教師同士のつながりができていれば生徒の声も「○○先生の話は、バラエティーに富んでいて、本当におもしろいよ」とプラス傾向の言葉が児童生徒の声が聞こえてきます。このように、まず派遣教師が児童生徒から「羨望される教師」になって国際理解教育を推し進めることにより、さらに、視野の広いユニバーサル基準での判断ができる児童生徒が増えてくることになるのではないでしょうか。
 日本人の中には、海外にいっていたというと、すべて世界各地を知っているかのように思われがちです。したがって、本当に世界各地の話題を提供することにより、「あの○○先生は、すごい」と思われるようになります。しかし、自分だけでは、派遣地の話題しかないのが現実です。そこで、全国各地から、世界各地に派遣になった先生方が連携することにより、多くの世界各地の話題を集めることができるようになるのではないでしょうか。

 ここで注意しなければならないことは、世界各地に派遣になった先生方が、日本各地に拡散して居住していることです。この方々が一同に集まって資料提供を行える場を提供できるようになれば、それはすばらしい素材が発掘できる可能性があります。自分一人でみていて発見できなかったような資料・素材も、人が変わって見れば、また変わった素材になっていき、違ったアプローチからの教材化ができるようになるのではないでしょうか。そうすることにより、今まで眠っていたような資料・素材も陽の目を見てくることになります。ぜひ、皆さんで力を合わせ、この場を作っていきませんか。
 いま、現在、同じ場所に集まったと同じようにできるのが、インターネットを媒介としたものです。お互いにWindows Skydriveサイトを使用することにより供用できるようになります。それ以前の問題として、人同士の交流を図っていくことが必要になります、この人と人の交流の場として派遣経験者が作っている全国海外子女教育国際理解教育研究協議会(通称 全海研)を使っていけばいいのではないでしょうか。

 私が、ここで全海研の推進役を務めさせていただくことになりましたが、私の希望は、全派遣教師経験者が一同に参集し、様々な資料・素材を提供しあって、おのおのの得意分野で、皆さんから提供された資料・素材をもとに、教材化を推進し、日本全国に国際理解教育を推進する機運を高めて実践していけたらと思っております。退職された多くの派遣経験者も時間的余裕を使って得意分野での教材化に力をお貸しいただけたら大変すばらしいのではないでしょうか。さらに、海外派遣中の皆様、現地でしか入手できない資料・素材を大いに収集し、未来の世界を担っていける人材育成のための教材作成に力をお貸しいただけませんでしょうか。皆様のお力を結集し、皆様で日本の国際教育を拡大していきませんか。まだまだ、外交手腕が国際標準からすると立ち後れているといわれます日本です。なんとか、世界各国と対等な話ができる人材を育成していきませんか、それにはまず教師自身が国際感覚を持った人材になりましょう。